NPO法人 関西イー・エルダーにおける活動事例と新たな取り組み
2022年12月吉日
特定非営利活動法人 関西イー・エルダー理事長 太田和之
1.はじめに
特定非営利活動法人「関西イー・エルダー」が2004年(平成16年)に兵庫県西宮市で設立されてから、2022年で18年が経ちました。
主に関西地域住民に対して、インターネット・パソコン・スマホなどのIT知識向上の支援を通じた情報格差解決等の社会貢献活動を実施しています。
2.会の発足~NPO設立認証まで
2002年より兵庫県下において、以下の事業活動を実施しておりました。
- 初心者パソコン相談室[三木市公民館、西宮市市民交流センター]
- 高齢者向けパソコン教室[西宮市大学交流センター、芦屋市ラポルテ、神戸市灘区神和教会]
- シニア情報生活アドバイザー養成講座[神戸市西神公民館、西宮市大学交流センター]
- 障害者向けパソコン講座[西宮市大学交流センター]
- パソコン寄贈[伊丹市ボランティア1団体に8台、西宮市の自治会1団体に2台]
上記活動実績に基づき、2004年5月21日に兵庫県に対して、特定非営利活動法人の申請を行い2004年8月20日に特定非営利活動法人として兵庫県より設立認定を受けました(写真1)。
設立以前の2002年よりニューメディア開発協会様の「シニア情報生活アドバイザー養成講座」を実施しており、以来関西地域で多くの資格者を養成してきています(写真2)。
3.目的
設立当初の当団体の目的・事業活動は以下の通りです。
兵庫県内地域及び近隣の住民に対して、ITの知識・技術とそれに基づく問題解決能力の向上の支援を通じた、当該地域の街づくり及び情報化社会の発展等に関する事業を行い、地域社会の利益に寄与することを目的とする。
上記目的を達成するための設立当初の活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 社会教育の推進を図る活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の活動に関する援助の活動
4.構成メンバーと組織
当会員は、IT企業のOBや勤務先でパソコンを活用していたメンバーなど、ITスキルが豊富な会員19名で設立し、現在は33名に会員を増やし主に兵庫県を中心とした関西地域で活動しています。設立当初より実施していた事業活動に加え、「スキルアップ講座」と呼ぶ組織内部向け勉強会を現在も継続して実施し、会員相互の情報共有と知識向上に役立てています。
社員総会は年1回開催し、年度のふりかえりと次年度に向けての活動について意見交換を行っています。年度会計は、4月1日始まり、3月31日締めです。年度毎の活動実績及び会計関係の報告書は、兵庫県に提出し、内閣府のNPOポータルサイトで公開されています。内閣府で公開されている情報は、下記サイトをご参照ください。
5.活動内容と実施事例
NPO設立の2004年は、政府「e-Japan重点計画」の終盤時期で、安い料金のブロードバンド(ADSL)の加入者が拡大した頃です。街中でヤフーBB(ADSL)の赤い紙袋を持ち帰る人をあちこちで見かけた頃と記憶しています。当会が設立した当初より、シニア初心者に対するパソコン教室を数多く開催していました。「今さら聞けないパソコンのこと」「神和パソコンクラブ講座」「西宮パソコン入門講座」「セキュリティ講座」「就職支援としてのパソコン講座」など兵庫県や大阪府などで多くのパソコン講座を開催しました(写真3、写真4、写真5)。
2004年当時、私自身はまだ当会に関わっておらず、コンピュータ会社のSEとして大型コンピュータ(汎用機)のシステムをWEB 3層構造システムへ再構築するプロジェクトを抱え奔走していた頃でした。技術的な話は長くなるので割愛しますがホストとワークステーションの「一極集中システム」から、「多層型の分散システムへ」の技術変革を現場で実感していた時期でした。
私が当会員になったのは、設立から10年経った2014年です。小さい頃から好きだった機械いじりが、いつのまにかプログラミングやパソコン通信に変わり、大学でもプログラミングを学び、大手コンピュータ会社に就職しました。SEとして30年が過ぎた頃、人生の大半をITに携わってきた事もあり、そろそろ知識を生かした社会貢献活動に参加してみたくなりました。当会にて「シニア情報生活アドバイザー養成講座」を受け、当会に入会しました。とは言え在職中でしたので、なかなか思う様に時間は取れず、社員総会や新年会などの定例イベントに参加するのがやっとでした。この頃の新年会は、居酒屋の個室を貸し切り、皆でお鍋を囲み和気あいあいとお酒を飲み、余興にビンゴゲームをしたりと、コロナ禍以前には良くある光景の宴会でした。今となっては懐かしいですし、このような時代に戻れるのでしょうか(写真6)。
その後2016年頃からスマホやタブレットの利用が世間に拡がり、シニアのニーズもパソコン講座からスマホ講座へ変わってきました。iPhone7が国内で流行り、幻となったWindows9はリリースされるのか?と噂されていた頃の話です。シニアがタブレットを触る機会を増やす目的で開催された「スマホ&タブレット合奏コンクール」に、当会の有志6名が参加し、iPadの楽器アプリで合奏を披露し金賞を頂いた事もありました(写真7)。
その後も携帯キャリアD社の「シニアのためのスマートフォン講座」や「シニア向けスマホ・タブレット講座」など、いつしかスマホ・タブレット講座の開催がパソコン講座より多くなってきました(写真8)。
2018年にニューメディア開発協会様が「スマホ・タブレットマスター養成講座」を開始された事に伴い、我々も養成講座実施団体として講座を開始しました(写真9)。
2019年度には独立行政法人福祉医療機構(WAM)助成の「シニアのためのスマホ講座」や携帯キャリアS社の「シニアスマホ講座」等、我々主催の講座のほとんどが、シニアにスマホを教える講座となりました(写真10、写真11)。
◆2020年コロナ感染拡大
2020年初旬頃から始まった「新型コロナウィルス拡大」は、世の中の生活様式を大きく変え、我々の講座にも影響を及ぼしました。2月頃までは感染対策をした上で、なんとか現地で開催していたのですが、3月以降の講座は延期や中止となってしまいました。その為2020年度からは、オンライン会議(Zoom)を活用し、4月開催の社員総会や隔月開催の理事会をオンラインで開催する運用形態に変更しました。この年の6月より私が理事長に就任しております(写真12)。
設立当初より継続して開催していた「スキルアップ講座」もコロナ禍でオンライン開催となりましたが、会場への移動が無くなり参加しやすくなった為、毎月1講座と開催数を増やしました。また、その日都合が合わなくてもZoom録画した講座内容を YouTubeで受講できる様にするなど、便利な運用形態を加え活用しています。この取り組みにより参加者、及び講師が増え、会員相互の情報共有と知識習得に役立っています(写真13)。
6.最近の新たな取り組みと今後の活動
当団体における「最近の新たな取り組み」を4つ紹介させて頂きます。
(1)デジタル活用支援員オンライン研修
2021年度にニューメディア開発協会様より「総務省デジタル活用支援員のオンライン研修」の業務を委託頂きました。令和3年度に採択された地域連携型団体の支援員に対して、必須研修をオンラインで実施しました。40名の受講者に対して講師1名とアシスト4名の総勢45名でのオンライン講座は初めてでしたが、全国の受講者に向けて講座ができるという大きな可能性がある事を改めて実感した取り組みでした。またこの研修はシニアネットの5団体で分担して実施したのですが、各団体と交流できる良い機会にもなりました(写真14)。
(2)インターネット安全教室
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「インターネット安全教室」の運営業務を受託されたニューメディア開発協会様より委託頂き、2021年度に西宮市で教室を開催しました。講師はオンライン、受講者は現地と言う、いわゆるハイブリットでの形態で実施しました。今後シニアのスマホ利用者が増える中、インターネットを安全に使うための講習会は、必要な知識でありニーズも高いので、今後も継続したい取り組みです(写真15)。
(3)まちづくり協議会スマホ講座
某市のまちづくり協議会様よりスマホ講座開催の依頼を頂き、2021年度にスマホ講座を開催しました。この地域は商店やスーパーの閉鎖、公共交通の利便性の低下が進み、地域住民の生活水準の維持ができなりつつあります。65歳以上の高齢者が地域住民の半数を超えている為、スマホを使える様になって、住民同士のコミュニケーションやネットショッピングを行いたいとのご依頼でした。我々が出張しスマホ講座を開くだけでは、シニアが日常的に相談できずスマホ利用が定着しない為、現地での協力団体や大学生などと協力する体制で講座を開催しました。今後このケースが増えてくる事を予見する講座形態となりました(写真16)。
(4)総務省デジタル活用支援講習会
今年度(2022年度)は総務省の公募・審査を受け、地域連携団体として採択されました。たくさんの公募書類の作成や西宮市との連携など慣れない作業もこなしながら、講習会を実施しています。講座内容に関しては、前年度の「デジタル活用支援員オンライン研修」の知識が生かせた事も大きかったと思います。「高齢者等が身近な場所で身近な人からデジタル活用について学べる講習会」のスローガンはシニア情報生活アドバイザーの活動目的にも合致しており、来年度以降も積極的に取り組みたいと考えています(写真17)。
7.まとめ
コロナ禍で拡大したデジタル活用は、生活様式を激変させました。外出行動には抑制がかかり、何をするにもオンラインが必要な時代となりました。ネットショッピング、QR決済、オンラインバンキング、オンライン会議、ネット動画配信、電子書籍など、いわゆるデジタルを活用したオンライン消費生活です。今や旅行に行くにも、映画を見るにも、美術館に行くにも、イベントに参加するためにはオンライン予約が必要になりました。公的分野もデジタル化され、行政サービスのデジタル化、オンライン診療、最近ではマイナンバーカードの健康保険証利用、免許証との一体化、マイナンバーカード機能のスマホ搭載の話も出てきています。デジタルを避けてきたシニアの方々にとっても、否応なくスマホを使う必要が出ています。
「誰一人取り残されないデジタル化」を実現するためには「高齢者等が身近な場所で身近な人からデジタル活用について学べる講習会」が必要であり、我々シニア情報生活アドバイザーの役割も更に大きくなっています。シニアの方々の一助となる活動を、今後も継続していきたいと思いを強くしております。今後とも皆々様のご協力・ご支援のほどよろしくお願い致します。